日本に定年制度ができたのはなんと8世紀!養老律令にその記載があるそうです。
「70歳になったら官職を辞すべし」というのがその内容です。近代の定年退職制度は1887年に定められた東京砲兵工廠の職工規定で、55才定年制でした。 民間企業では、1902年に定められた日本郵船の社員休職規則で、こちらも55才定年制でした。当時の日本人の平均寿命は43歳ですから、文字通り「終身雇用」だったわけです。
今の制度は「なんちゃって終身雇用」だ
2023年現在、日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超え、女性は90歳に届こうとしている。そんな中で定年が60歳ということは「終身雇用」ではなく、企業にとっては年齢を理由に堂々と首を切れるありがたい制度でしかないと思います。
定年制度があるのは日本ぐらいのもので、何歳で仕事からリタイアするかは個人が決めるるのが世界の常識です。
年齢が高くなっても働く人が増加
厚生労働省の調査によると、年代別常用労働者数 対象企業全体の常用労働者総数(約3,480万人)のうち、60歳以上の常用労働者は約470万人。 13.5%(0.3ポイント上昇)を占めています。約7.5人に一人は60歳以上ということになります。
年代別では、60~64歳が約254万人、65~69歳が約128万人、70歳以上が約88万人。今の日本では60代以上も貴重な労働力になっているわけで、年齢を理由に解雇できる今の定年制度は、年齢差別でしかないと私は思います。
再雇用という名の罠
多くの企業は、60歳で定年退職をさせた後に、再雇用制度でもう一度雇用を継続しているところが多いです。再雇用になると、給与はそれまでと比べると大幅にカットになってしまうことがほとんど。半分とか3分の1になってしまう人もいます。
では、仕事の中身や求められるアウトプットが半分でいいとなるか?といえば、答えはNO.これまでと同じ仕事を同じ品質でやってほしいけど給料は減らすよ!というのが「再雇用制度」。59歳と60歳で何も変わらないのに、給料が減らされ、身分が1年ごとの契約社員みたいになっちゃうのは、果たして持続可能性の高い社会といえるのでしょうか?
定年後にも学費負担は続く・・・・
晩婚化が進む日本では、定年までに子どもが大学を卒業しないケースが激増中です。40歳で子どもを持てば、60歳の時には大学2年生。年間100万円を超える学費を、これまでの半分の給料で負担しなければなりません。45歳で子どもを持てば、定年のときにはまだ高校生です。奨学金を借りてもらうと、子どもは社会に出てからも返済義務を負ってしまう。教育のコストを国民に押し付けて、「なんちゃって終身雇用」の中で何とか切り盛りさせてきた構図がなりたたなくなってきたわけです。
雇用制度の見直しと教育の無償化をセットで
定年や職制定年のような、年齢で一律に労働者を切り分けてしまう制度はできるだけ早く無くすべき。いくつになってもチャレンジできる社会でなくては、生きる先に希望を見出せません。また、行政側で教育費用を負担する教育の無償化を推進していかなければ、安心して働き続けることができません。神奈川が日本のリーダーとなって、年齢差別撤廃に向けてのかじ取りをしたいと思います。何歳であっても、何歳になっても、生きたいように生きられる社会に、少しでも近づくために。
ちなみに大阪では高校は私立でも無償です。2020年4月からスタートした大学の無償化は、実は所得制限があり、基本的には住民税が非課税の方が対象になります。所得制限をつけてしまうと、働けるのに働かないほうが得、という状況を生み出し、サラリーマンのように源泉徴収されてしまう人にとっては不利、ということも起きます。所得制限なしの教育無償化を実現すべきと私は思います。
そんなの、お金持ちに有利じゃないか!という声があがりそうですが、所得制限をつけるデメリットは
・審査という権利を生み出してしまう。不正が起きる土壌になります。
・審査をする事務手数料がかかり、行政コストが上がります
・年度の途中で事情が変わること(仕事がなくなった、病気をして働けなくなったなど)に対応しにくく、収入がなくなっているのに、所得額に反映されるのは次年度という恐ろしい時差が生じてしまう
所得制限という形式ではなく、所得が多い人に対する課税の在り方を見直すほうがよほど効率的です。
年齢への偏見を無くす。簡単ではないけれど。
「若い人であれば、積極的で新しい発想があり、年齢が高い人は古くて凝り固まっている。」
これって、年齢によるバイアス・偏見です。若くても保守的な人はいるし、年齢が高くてもアグレッシブな人もいる。人を「個」として尊重すれば、その人が今の段階でどうなのか?偏見なくみられるはずなのです。しかし日本は年長者を敬うという文化的な背景もあり、年齢を測りに人と接するという年齢バイアスがなかなか消せないだろうとも思います。それでも超高齢化社会で生き抜いていくために、生涯幸せでいられるためにも、制度改革にしり込みしていてはいけないと私は思います。
西村恵美 公式ブログ→
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