日本の法務省の法制審議会(法相の諮問機関)は今年(2023年)2月17日、性的行為について自分で意思決定ができるとみなす「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げることなどを盛り込んだ、刑法の性犯罪規定改正の要綱を斎藤健法相に答申しました。
と、聞いても、なんじゃそれ?と思う方が多いのではないでしょうか。
子どもたちの「身を守る」法改正
日本の「性交同意年齢13歳」は明治時代から変わらず、先進国の中で最も低い同意年齢です。ドイツやイタリアでは14歳、ギリシャやフランスでは15歳、イギリスやアメリカの多くの州では16歳。
改正により、16歳未満への行為は同意の有無にかかわらず処罰対象となるが、13~15歳の場合は、加害者が5歳以上年上のケースを処罰対象とする。
つまり、16歳未満の女性と性行為を行った場合は、「相手が同意した」と言い張っても罰せられます。性行為そのものが自分の体に与える影響を理解していない状態で性行為を大人から強要され、それを同意だったとされた場合、今までは12歳までの子ども以外守ってあげられなかったのですが、この年齢が引きあげられることで、15歳までの子どもは例外なく守られることになりました。
13歳から15歳については、相手が5歳以上年上の場合処罰の対象となるということは、学校の同級生同士で恋愛して性行為に至っても、直ちに処罰の対象とはならないということ。16歳にならなければ性行為をしてはいけない、という趣旨ではありません。
レイプに対して寛容な国、日本
これまで日本の裁判所は、レイプに対しては非常に「寛容」な判断をしてきました。前例主義の悪しき事例だと私は思いますが、酩酊状態の女性をレイプした男性が「合意のもとだった」と主張して無罪になったり、10代の実の娘をレイプした父親に無罪判決が出たり。これらの事例で無罪になったのは「明確に拒否しなかった」という理由でした。実の娘をレイプした事案はのちに検察が控訴し、逆転勝利によって父親は実刑判決を受けていますが、レイプ特に近親者によるものは、事件として発覚すること自体がとても難しいものです。日本は諸外国に比べレイプの発生件数が少ないのですが、実際には犯罪として顕在化するものの20倍は存在するといわれています。とりわけ加害者が親族の場合、世間体を気にして事件化しないケースがほとんどではないかと思われます。しかも、被害にあった子どもが「自分は性行為をされたのだ」「それは本来子どもがされるべきものではなかったんだ」と気が付くのは大人になってからのことも多く、時効になって提訴できないということもあります。
子どもが性被害にあった場合、明確に拒否をするということそのものが難しいのですが、性同意年齢が引き上げられることで、明確な拒否がなくても、性行為に対して処罰ができるようになりました。
性的虐待をなくしたい
性同意年齢の引き上げで、処罰がしやすくなったとしても、本来は性的虐待にあわないことのほうが重要です。そしてもしも被害にあってしまったら、心のケアをいち早く行っていくことも大切です。しかし、特に家庭内における性的虐待を見つけるのはとても難しく、平成29年の神奈川県の調査によれば、性的加害者のトップは実の父親(61%)。世間体や家計の経済などを考え、事件化させずに葬られることは実際に見えてくる数字よりもずっと多いことは想像に難くありません。
こうした被害を食い止めるには、啓蒙活動や学校との連携が必要不可欠です。かといって神奈川県が今行っているようなパンフレットの配布ぐらいでは実効性はありません。
大阪にあるNPO法人「SACHIKO」では、年齢や内容に限定を設けず、広く女性の性暴力被害の相談にのっています。警察や地域医療とも連携してワンストップで対応できる仕組みづくりがなされています。40代になって初めて子どもの頃の性的虐待のことを口にすることができたと電話口で号泣する方もいらっしゃるそうです。
神奈川の子どもたちを救うあらたな試み
神奈川県は、平成29年までは性的虐待に対する実態調査を行っていました。その内容は想像を超えるおぞましい結果です。性的虐待が人生に大きな影を落とすことは言うまでもなく、幼いころに受けた性的虐待の影響は死ぬまで付きまといます。実態調査が続かなくなってしまって、どうした!?神奈川((+_+))と思っていたところ、クラウドファンディングで子どもの司法面接の場を病院に設置し、ワンストップで子どもたちを守るという新しい試みがスタート。
神奈川県立こども医療センターに司法面接室 きみの負担軽くしたい 虐待被害など聞き取り 1カ所で診察と心のケアも:東京新聞 TOKYO Web
神奈川県立こども医療センターの中に、NPO法人「子ども支援センターつなぐ」によって設置されたもので、小児病院内に設置されるのは全国でも初めてのケースなのだそう。
性同意年齢が引き上げられる、明治以来の大改正をさらに実効性のあるものにするためにも、性被害に対し積極的に支援策を講じていくこと。私が力を尽くしたい政策の一つです。
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