好きな時間に好きなだけ働くことができる「スキマバイト」の登録者?数が急増し、延べ2500万人を超えたそうです。労働力が確保できない企業と、少しでも時間をお金に換えたい労働者のニーズにマッチしたために大きく伸びているのですね。
すきまバイトの問題点に、一人の労働者が労働基準法の枠組みを超えて労働することを把握できないということがあります。本来であれば割増賃金の対象となる労働でも、割増賃金を請求していないことがほとんどです。ある企業でフルタイムで働いている人がすきまバイトをした場合のように、実際に「一日8時間以上」「週40時間以上」働いている人がいた場合、違反の責任を負うのは誰なのでしょうか。この場合は「副業として働いている事実を知りながら、他社の勤怠状況を確認せずに雇用した会社」となります。サービス提供者(アプリの会社)に直接責任を問うことはできません。
また、利用する企業側はすきまバイトに依存し、通常の採用を控えてしまうということも起きています。すきまバイトは社会保険の対象ともならないため、手軽に利用できる分、依存の度合いが高くなりがちなようです。本来労災の保険料は年間の総賃金に対して計算されますが、すきまバイトの分を計上せずに保険料を算出してしまい、後日追徴の対象となってしまうこともあります。利用する企業側はこうしたリスクや見落としがちな点をしっかりと把握しておかなければなりません。
他方、すきまバイトで働く労働者は、日々雇用される労働者となりますが、実は同一の企業で何か月も働き続けた場合、通常の雇用と同様に解雇予告などの適用となる場合もあります。すきまバイトで働く多くの労働者はこうしたことを知らずに働いているのではないでしょうか。先の例のように1日八時間、週40時間を超えての労働の場合は割増賃金の対象になることも、知らない方がほとんどです。
また、すきまバイトは、例えば通常の労働市場ではなかなか仕事が見つけられない中高年でも仕事を見つけることができるとあって、若い世代だけでなく中高年の利用も多いです。中にはすきまバイトだけで生計を維持している方も。しかし、すきまバイトのサービス提供業者は、理由を明示せずに一方的にサービスの提供を打ち切ることができてしまいます。すきまバイトのサービス提供を受けられなくなれば、それで生計を立てている人にとっては死活問題ですが、どこにも文句を言えません。サービス提供者は労働者に対し、サービス提供者は利用停止の予告も、利用停止理由の明示も必要ありません。サービス提供者と労働者は雇用関係にはないため、解雇予告や解雇理由の明示に該当するような事項はありません。また、企業側は、実際に働いた人をブロックという形で排除することができますが、理由の明示などは必要ありません。「なんとなくうちには合わない」などのあいまいな理由でもブロックができてしまいます。ブロックされた側はその理由を知ることもできません。これは労働者側にとってはとても不合理だと私は思います。そしてそうしたことに対して苦情を申し立てることすらできないのが現状です。
ワークシェアを可能にし、労働の流動性を高めていることは、必ずしも否定すべきことではありませんが、それにより押しつぶされ、踏みつけられる労働者をどう保護するのか、利用する企業とサービス提供者にどのような責任を配分するのかを考えるべきでしょう。
すきまバイトで働く労働者は、いろいろな職場を体験するため、実は企業の不正やおかしなところを見つける良き「カナリア」になる可能性もあります。しかし現状のすきまバイトの制度では、内部告発の保護対象にはならないため、声を上げることが難しいという側面もあります。通報や内部告発によってすきまバイトで働く労働者に不利益をもたらさないしくみづくりも検討すべきでしょう。
新しい働き方だからこそ、そのために苦しむ人がでないよう、考えていきたいです。
まずはすきまバイトに関するホットラインを設定し、今現場で何が問題となっているのかを吸い上げ、同時に利用する企業側の実態の把握も必要でしょう。サービス提供企業の責任については、企業側からのブロック依頼に対して、正当性の調査や労働者への開示、サービス打ち切りの際に解雇と同様の制限を設けるべきだと私は思います。